一次証拠フィッシング(SMS・メール)

「【国税庁】ご確認が必要な文書」のSMS — リンクは t.co から duckdns.org へ転送される

公開

受信したSMS(2026年3月・引用)。送信元番号の下4桁はこちらでマスキングした。

国税庁をかたるSMSに、X(旧Twitter)の短縮リンク t.co が使われていた。実際の転送先は無料のダイナミックDNS(duckdns.org)のサブドメインで、SMSの文面からは遷移先が分からない。

要点

  • 「【国税庁】ご確認が必要な文書についての通知です」というSMSが、個人の携帯電話番号の形式の送信元から届いた。
  • リンクは X(旧Twitter)の短縮ラッパー t.co。SMSに t.co のリンクがあるのは、X上に載せたURLを短縮した形を転記しているため。文面からは遷移先が分からない。
  • 2026年8月に確認したところ、t.co のリンクは無料のダイナミックDNS 1kwhk1x8.duckdns.org へ301転送された。最終的な偽サイトはサーバーが停止しており内容は確認できなかった。
  • 国税庁は「SMSやメールにURLを記載して送ることはない」と明言している。この一点で詐欺と判断できる。
名指ししている対象

公的発表または自己検証した一次証拠がある場合に限り記載しています。

  • ドメイン:1kwhk1x8.duckdns.org — SMS内の t.co リンクの転送先。無料のダイナミックDNSサービスのサブドメイン。2026年8月時点でDNSレコードは残るがサーバーは応答しない。

国税庁をかたるSMSが届いた(2026年3月に受信)。

この手のSMSは以前から数多く報告されている。今回、気になったのはリンクの形だった。 本文に貼られていたのは https://t.co/… という短縮リンクで、これは X(旧Twitter)が使う URLラッパーである。SMSにこの形のリンクがあるのは何を意味するのか、どこへ飛ぶのかを、 受信から数か月後に自分で確認した。掲載する画像は、受信したSMSを報告・検証する目的での引用として示す。

事例紹介

受信したSMS

受信したSMSのスクリーンショット(2026年3月30日受信・引用)。送信元番号の下4桁はこちらでマスキングした。
  • 送信元:個人の携帯電話番号の形式(+81 80-XXXX-XXXX)。国の機関の番号でも、企業がよく使う共通の番号でもない。
  • 受信時刻:深夜1時台。
  • 「未払い」「差押え」といった強い言葉はなく、「ご確認が必要な文書」という曖昧な言い回しになっている。

本文は次のとおり。

【国税庁】ご確認が必要な文書についての通知です。内容をご覧ください。 https://t.co/JIis3ITgY0

リンクの転送先

本文のリンク https://t.co/JIis3ITgY0 を、2026年8月29日にリクエストして応答だけを確認した (ページは開いていない)。

$ curl -I https://t.co/JIis3ITgY0
HTTP/2 301
location: https://1kwhk1x8.duckdns.org/

t.co から、1kwhk1x8.duckdns.org へ301(恒久的な転送)でリダイレクトされた。

  • t.co は X(旧Twitter)の短縮URLラッパー。X 上に URL を投稿すると、本文の見た目に関わらず リンクは自動的に t.co/… に置き換わる。逆に言えば、SMSに t.co のリンクが入っているのは、 誰かが X 上(ポスト・DM・プロフィール等)にこの偽サイトのURLを一度載せて t.co 化し、 その短縮形を SMS に転記したことを示す。SMSの文面だけを見ても、t.co の先がどこかは分からない。
  • 1kwhk1x8.duckdns.org の duckdns.org は、無料のダイナミックDNSサービス。 誰でも即座に、無料で、任意の文字列.duckdns.org というサブドメインを取得できる。 ランダムな8文字のサブドメインは使い捨て前提で、ドメインの登録料もかからない。

この転送先 1kwhk1x8.duckdns.org は、確認した時点ではDNSのAレコード(海外のホスティング事業者の IP範囲)は残っていたが、サーバーは接続タイムアウトで応答せず、最終的な偽サイト本体の内容は 確認できなかった。

確認できること・できないこと

  • 確認できること(一次証拠) — このSMSを受信したこと。送信元が個人の携帯電話番号の形式だったこと。 本文のリンクが t.co の短縮リンクだったこと。そのリンクが2026年8月時点で 1kwhk1x8.duckdns.org へ301リダイレクトされること(自分でリクエストして確認)。
  • 確認できないこと — 転送先の偽サイト本体の内容(サーバーが停止していたため)。 送信元番号が実在の契約者のものなのか、詐称または使い捨ての番号なのか。 誰がこのSMSを送ったか。X 上のどこにURLが載っていたか。

国税庁の案内との違い

国税庁は、次のように明記している1。

  • ショートメッセージ(SMS)やメールにURLを記載して送ることはない。
  • LINE でメッセージを送ることもない。

e-Tax に関する正式なお知らせは、e-Tax のメッセージボックスやマイナポータルなど、 決まった経路で届く。SMS で「文書を確認してください」とURLを送ってくることはない。 つまり、このSMSはリンクを開くまでもなく、受信した時点で詐欺と判断できる。

手口の類型

  • 行政・公的機関の告知を装う — 「【国税庁】」という差出人表記と「ご確認が必要な文書」という 役所風の言い回し。リンク先は国の機関のドメイン(*.go.jp)ではない2。
  • スミッシング(SMSフィッシング) — 実在の組織をかたるSMSで偽サイトへ誘導し、 氏名・住所・電話番号・クレジットカード番号・セキュリティコードなどを入力させる手口が 報告されている3。Android 端末では不正アプリのインストールに誘導する例もある4。
  • 遷移先を隠す多層リダイレクト — 「正規サービスの短縮ラッパー(t.co)」+ 「無料のダイナミックDNS(duckdns.org)」という組み合わせ。どちらも、 URLを見ても最終的な行き先が分からず、かつドメイン単位のブロックリストに載りにくい。 海外では、正規サービスを隠れ蓑にするこの手口を “Living Off Trusted Sites(LOTS)” と呼ぶ5。 無料の短縮URLサービスに確認手順が増えたり早めに遮断されたりする一方で、 プラットフォームに元から備わるラッパーやダイナミックDNSは今も使われている。 IPA も「偽SMSでは短縮URLが多用され、遷移先が判別できない」と2022年時点で指摘している4。

見分け方(今回の事例から)

  • 国税庁・税務署は、SMSやメールにURLを付けて納付や書類確認の案内を送らない(公式が明言)。 税に関する連絡は、e-Tax のメッセージボックスやマイナポータルの正規アプリで確認する。
  • リンクの形を見る — t.co/…、bit.ly/… などの短縮リンクや、◯◯.duckdns.org、 ◯◯.no-ip.* のようなダイナミックDNSのURLは、遷移先が隠されている。 正規の役所・企業の通知が、遷移先の分からない短縮リンクを使うことはまずない。
  • 送信元 — 個人の携帯電話番号の形式(090 / 080 / 070)。
  • 本文の曖昧さと時刻 — 「ご確認が必要な文書」のように内容を特定しない言い回し、深夜の送信。
  • 開いてしまった場合でも、個人情報・カード番号・認証コードを入力しなければ被害には直結しにくい。 入力を求められた時点で離脱する。

補足

フィッシングのSMSやサイトは、フィッシング対策協議会([email protected])に情報提供できる3。 国税庁をかたるものは国税庁の「不審なメール等の情報提供」窓口にも報告できる1。 迷惑SMS自体は、契約している携帯電話会社の窓口や、端末の「迷惑メッセージを報告」機能から報告できる。

Footnotes

  1. 国税庁「不審なメールや電話にご注意ください」。ページを見る ↩ ↩2

  2. なりすまし・公式誤認の型(行政・公的機関の告知を装う/実在組織をかたるフィッシング)。判断の物差しは運営方針の考え方に沿う。 ↩

  3. フィッシング対策協議会「国税庁をかたるフィッシング(2024/05/22)」。ページを見る ↩ ↩2

  4. IPA「国税庁をかたる偽ショートメッセージサービス(SMS)や偽メールに注意」(2022年10月31日)。ページを見る ↩ ↩2

  5. “Living Off Trusted Sites (LOTS)” — 攻撃者が、ブロックされにくい正規サービス(URL短縮、クラウドストレージ等)を経由してフィッシングの遷移先を隠す手法の総称。セキュリティ事業者の分析で用いられる呼称。 ↩

確認した一次証拠

一次証拠SMS(2026.03.30 取得)

個人の携帯電話番号の形式(+81 80-XXXX-XXXX)の送信元から届いたSMS。本文は「【国税庁】ご確認が必要な文書についての通知です。内容をご覧ください。 https://t.co/JIis3ITgY0」。受信は深夜1時台。送信元番号の下4桁はこちらでマスキングした。(個人情報はマスキング済み)

一次証拠その他(2026.08.29 取得)

2026年8月29日に確認。`curl -I https://t.co/JIis3ITgY0` の応答は `HTTP/2 301` で `location: https://1kwhk1x8.duckdns.org/`。t.co(X の短縮ラッパー)が、無料ダイナミックDNSのサブドメインへ転送していた。転送先の `1kwhk1x8.duckdns.org` はDNSのAレコード(海外のホスティング事業者の範囲)は残るが、サーバーは接続タイムアウトで応答せず、偽サイト本体の内容は確認できなかった。

ソース

公的発表国税庁「不審なメールや電話にご注意ください」

国税庁は、ショートメッセージ(SMS)やメールにURLを記載して送ることはない、LINEでメッセージを送ることもない、と明記している。

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公的発表IPA(情報処理推進機構)「国税庁をかたる偽ショートメッセージサービス(SMS)や偽メールに注意」

「偽SMSの場合、サイトのURLは短縮URLが多く使われていて、見た目のURLではどのサイトにジャンプするのか判別できない」と説明している(2022年10月31日)。

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公的発表フィッシング対策協議会「国税庁をかたるフィッシング(2024/05/22)」

誘導先の偽サイトで、氏名・住所・電話番号・カード番号・有効期限・セキュリティコードなどの入力を要求される、としている。

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関連する注意喚起

行政・企業をかたるフィッシングSMS(スミッシング)

国税庁・税務署や、決済・通信・配送などの事業者を名乗り、「未払い」「引落失敗」「文書の確認」などの名目でSMSのリンクから偽サイトへ誘導する手口。リンクは短縮URLやダイナミックDNS、使い捨てドメインで遷移先が隠されることが多い。行政・主要な事業者は、SMSにURLを付けて納付や料金支払いの案内を送らないとしている。

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